Passage

1-5


1
我が家が怖いというのなら
駐車場で夜を明かそう
君が涙で眠れないなら
朝が来るまで拭ってあげよう

2
ドアノブを捻ってドアを開けるように
その手で僕を絞めて殺してよ

3
「I hate you.」
(そんなの言われなくたってわかってるわ)

4
常温解凍2.5分
レンジで1分 冷ますのは2分
君だけに届ける熱さを
ちょっとだけ冷たさでごまかした

5
立てば芍薬 座れば牡丹
ひとたび喋ればラフレシア

6-10


6
最初から一緒だったんだ
最後まで一緒じゃなきゃ嫌だ

7
私から君をとったら何が残るのかと問われたら、
私を失った君が残るだけですと答えるしかありません
私は君そのものなのですから、君を失った私は残ることなどないのです

8
よく言えば寛容
悪く言えば無関心

9
おこがましいと思うかな
それでも君に愛されたいのさ

10
あの人以外に貰われるための花嫁修業に、
なんの意味があるんだろう。

11-15


11
心がふたつあるみたい?
でも器はひとつしかないからね
だから苦しいんだろうね

12
殺してもらえるうちが花なのかな
いちばん寂しいのは見捨てられることかもね

13
言いたいことはいっぱいあるのに
なんでかな 伝わらないの

14
私のものになったんだから
私のことを考えなさいよ

15
いいよ 隣にいたいなんて言わないから
ただこの目に少しでもあなたを映せたら

いやだ
隣にいたい

16-20


16

心の臓が止まって血の流れが止まって命が止まって死んでいく。その冷たさを私は知っている。 誰にも埋められないその穴の大きさを私は知っている。
あなたがいたはずのその場所に誰かが何かを代わりに付け足しても、1ミリも届きやしないことを私は知っているんだよ。


17

赤信号の危険な光。前の車の真っ赤なテールランプ。
すべての降車ボタンが爛々と輝く、私と運転手しかいないこのバスの中が毒々しい赤に染め上げられる。


18

特段何かがあった訳でもないのに、日常をすごしている中でふと絶望の淵に立たされることがある。
それはするりとなめらかに心に忍び寄ってきて、なんでもないようにそこに居座っている。 わたしの思いをものともせず、なにかがそこでわたしが落ちるのをじっと待っているのだ。 そしてわたしはいつもそれに引き寄せられて、ぎりぎりに立って、底の見えない深淵を覗こうとするのである。


19

伸ばされた手を掴んだとして、そしてそれが救いであったとするなら、二度と離さぬようにしっかりと握るはず。たとえ自分だけが助かるものだとしても。


20

たまに何もかもどうでも良くなって、全部投げ出したくなって、でもそうした途端に寂しくもなって、 繋がりが消えるのが怖くて、縋りつこうとしてそれすら面倒くさくなって、 でも確かにそうして生きていきたいとも思うから、惰性で呼吸してる。